2005 No.13
(0321 -0327)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

農民問題の解決に確実に力を入れよう

李 想

中国は農業大国であり、農業は中国では国と民心を安定させる基盤産業と戦略的産業であり、今、それは坂を登る困難な段階に差しかかっている。中国共産党第16回代表大会開催以来、中国政府はほんとうに農民問題を解決し、農民が実益を得られるようにするため、一連の政策と措置を打ち出した。

中央1号文書

中央政府は1月30日に、「農村の仕事をいっそう強化し、農業の総合的生産力を高めるいくつかの政策に関する中国共産党中央委員会・国務院の意見」を、今年の中央1号文書として発布した。農業問題の解決策を1号文書として発布するのは、農業問題に対する中央政府の重視を示すものである。中央政府は23年間に農業問題に関する1号文書を7回も出した。今年の1号文書は「多く与え、少なく取り、自由にやらせる」方針を堅持し、農業支援策の安定、充実、強化をはかるものである。それによれば、中央は国民所得配分の枠組みを調整し、都市に財政分配、資源配分を傾斜させる政策を農村に切り換え、既存の農業への投入を定着させることを踏まえて、新規増加の財政支出と固定資産投資を3農(農業、農村、農民)に傾斜させ、農業資金投入を拡大する安定したメカニズムを徐々に構築することになっている。

中国経済という船はすでに「小さな船」から「汽船」へと発展をとげている。昨年の国内総生産は13億6500万元を上回り、外貨準備高は6099億ドルに達している。国のマクロコントロール能力が著しく向上した状況のもとで、収入が都市部住民の3分の1以下の農民により多くの負担をかける理由はなくなっている。

中国農業部の杜青林部長は、「中国は工業化の中期の段階に入っており、国外の経験によると、この段階は工業が農業を逆に養い、財政が農民を逆に養い、都市と農村が分割から協調的発展に向うものである。国内の実情から見れば、農業は国の基盤産業であり、国民経済の中の弱い部門でもあり、長年間にわたる工業を支援してきたので、客観的にも工業が農業を逆に養い、財政が農民を逆に養うことが必要となっている」

都市と農村の発展を統一的に計画する

工業化、都市化、市場化の条件下で、「3農」問題を解決するには、必ず都市と農村、経済と社会の発展を統一的に計画しなければならない。「3農」問題がなぜ長期的に解決できないかと言えば、計画経済体制の下で形成された都市と農村の体制、構造、関係がいまも農村の生産力発展を束縛し、農民の生産意欲の発揮を束縛しているからである。そのために、都市と農村の体制を改革し、都市と農村の関係を調整しなければ、3農問題を徹底的に解決することができないのである。

中国社会科学院社会学研究所の専門家は次のように見ている。都市と農村が統一的発展をとげるには、何よりも先ず戸籍制度を改革しなければならない。公民を人為的に農業戸籍と非農戸籍に分けている現行の戸籍制度は、2元経済の社会構造を形成するための条件であり、都市部に入った農民が農民就労者となるしかなく、さまざまな社会的問題を発生させる原因ともなっている。

2、農村の土地制度をさらに改革しなければならないこと。農家が集団所有の耕地を請け負う現行の制度には、農民が自主的経営権を持ち、当面の生産力のレベルに適応するというメリットはある。しかし、第2ラウンドの請負は30年間変わらないと明文で規定されているが、農民の土地が剥奪される現象がしばしば発生している。そのため、国は農民の土地の長期使用保護策を制定すべきである。

3、現行の農民就労体制を根本から改革しなければならないこと。農村人口の都市部への移転は、工業化、都市化、現代化の発展した必然的な法則である。こうした体制は農村が都市のために犠牲となる形態の一種で、不公平であると同時に不合理でもある。これは都市部と農村の格差がますます大きくなる原因の一つとなっており、3農問題がどうしても解決できない重要な原因でもある。

4、国民所得の配分の枠組みを改革し、財政体制を調整しなければならないこと。現行の国民所得配分の枠組みはなが年踏襲されてきたものであり、蓄積を重視してはいるが、消費を軽視しており、都市部を重視してはいるが、農村を軽視しており、都市部と農村の関係のアンバランス、地域間の関係のアンバランス、経済と社会の発展のアンバランスをもたらす体制的原因である。

46年間実行してきた農業税に終止符

今年の元日前後に、広東、江蘇、河南、浙江、四川、山西、海南、貴州、安徽諸省および寧夏回族自治区と重慶市があいついで農業税の全面廃止を発表し、数億もの中国農民への新年のプレゼントとなった。これまでに、中国大陸の31省・直轄市・自治区の中で、農業税を全面的に撤廃したものは25に達している。

農業税は1958年から実施され、現金以外の食糧または主要な農産物などの実物を徴収するものが多かった。徴収の仕事は農村の幹部によって進められるため、一般には「公糧」(政府に納める食糧)とも言われている。

農業税徴収の実施について、湖南省双峰県のある86歳のお年寄りの言葉では、「耕作すれば穀物を納め、育った子供は親孝行をするもの」と、当然のことと思われていた。このお年寄りと同じように、中国の農民のほとんどは当時の農業税実施に賛同していた。  

農業税が実施されてから45年間を経るなかで、当初の先進的な制度から農業経済の発展を制約するものに退化した。現在、世界で農業税を実施している国は中国とベトナムしかない。中国の一ヘクタール当たりの農業税は200ドル弱である。

財政部の楼継偉副部長は、温家宝総理が昨年3月公約した5年間で農業税を廃止する目標は繰り上げて達成される見込みがある、と語っている。

統計データによると、昨年、全国で農業税の負担が約280億元も軽減され、農民の1人当たり負担減は30%以上に達した。農業税改革前においては、国の農業税収入は年間約600億元であった。

湖北省大冶市の農村のある0.2ヘクタールの田畑を持つ5人家族の農家を例にすると、2003年には、農業税(農業付加税を含む)を約300元納めたが、2004年には、同省の農業税引き下げで、134元減の166元となった。農業税が廃止されれば、毎年300元の収入が増えることになる。

300元は多くとは言えないが、年平均収入が2000元の家庭にとってはかかりの額であり、子供1人が学校で1年間勉強する費用に相当する額である。

農業税減免は穀物を作付している農民の積極性を引き出すことができる政策である。河南省内郷県の大橋郷の農民郭天朝さんは、農業税の負担が重過ぎて、穀物作付では採算がとれないため、田畑を放置したまま荒廃させた。しかし、今後農業税が免除されることになれば、穀物作付でも儲かるので、出稼ぎに行く必要はなくなる、と語った。

中央財政は農業支援拡大へ

昨年は、農業税廃止が進捗すると同時に、中央財政は農業支援への取り組みの度合いを大きくした。例えば、中央財政は移転支払い資金219億元を農業税改革実施の補助金として地方財政のために計上した。また、農民の負担を軽減し、穀物生産を促進するため、農業生産手段の価格を安定させる特恵税収政策を打ち出した。

全国の29省・自治区・直轄市は、穀物作付農家への直接補助を実行することになり、補助総額は116億元に達し、受益農民は6億人にも達している。そのほか、国有食糧企業の改革を積極的にサポートし、食糧価格の市場化を促進し、逐次中間段階への補助金を減らすことにした。

今年の1号文書の公布以後、中国財政部はまた、地方政府の財政難を緩和し、穀物生産を安定させ、国の食糧安全を確保するため、全国の800近くの穀物生産大県に対して55億元を計上することにした。

上述の措置をとる理由について、財政部弁公庁関係筋は次のように語っている。「食糧は剰余価値が低い商品で、地方政府のそれによる財政収入も少ない。穀物生産大県の国の食糧供給のための貢献が多いほど、その経済力にひびくため、穀物生産の意欲も抑えられるにきまっている。そこで、中央は地方支援策をとることにしたのである」

農民就労者の生存状況を改善

中国には、農村の労働人口が約4億8000万人もいるが、農業、林業、牧畜業、漁業に必要な労働力はわずか1億7000万人である。現在、農村の労働人口の1億6000万〜2億人が非農産業に転じるか、または都市部で就労している。国家統計局農業調査総隊の調査によると、2003年の出稼ぎ農業人口は1億1390万人となっており、都市部で働く農村人口の中の地区クラス以上の大中都市にいる者が60%を占めている。

都市部へ出稼ぎに行く農村就労者の就労環境を改善するため、国務院弁公庁は「都市部への農村就労者の就労環境のさらなる改善に関する通達」を下達し、次の三つのことを展開するよう要請している。@都市部への農村就労者向けの差別規定および不合理な制限を撤廃する。A組織的な労働力輸出を展開する。B農民就労者のための職業紹介などのサービスを充実させる。C農民就労者のための職業相談を展開する。

また、労働・社会保障部も新たな就職政策を打ち出した。その中の重要な内容の一つは、今年の春節(旧正月)前後に、都市部の各クラスの公共職業紹介機構に、農民就労者に無料で開放し、就業情報や政策についての解釈、就業指導、職業紹介などのサービスを提供するよう要請したものである。

さらに、社会保障の面では、今後、雇用部門と労働契約を結ぶか、または事実上の労働契約を結んだ農民就労者は、労災保険を享受できることになる。雇用部門は農民就労者のために適時に労災保険の手続きをとらなければならない。労災保険に加入していない企業にで農民就労者が負傷した場合、企業は「労災保険条例」の関連基準に従って労働傷害費用を支払わなければならない。労働・社会保障部門は農民就労者の特徴に見合った保険金の支払い方法を制定することになる。

国務院は戸籍制度を改革し、農民就労者を都市の産業労働者に切り換えることになっている。戸籍制度改革が多くの省で急がれている。湖北省は46年間実施されてきた「農業」と「非農」に分かれた戸籍制度に終止符を打ち、単一の戸籍管理制度を確立し、都市部に入る人口指標を取り消し、戸籍を就業先にしたがって移転する方法をとることになった。湖南省も単一の戸籍制度を実行し、省全域において農業戸籍を取り消し、非農業戸籍の性格をもつものや、そこから派生したその他の戸籍類を「住民戸籍」に統一することになった。

昨年、社会各界は農民就労者への未払い給料の調査・支払いに大きな関心を示した。中国建設部の統計データによると、今年の初めまでに、全国で数年間も支払い延び延びになっていた農民就労者の給料が331億元返済され、これは各地が報告した未払い給料の98.4%を占めるものである。そのうち、天津、黒竜江、上海、海南、浙江などの省・直轄市は建設業種での調査・支払い作業を終了した。

また、社会は農民就労者の精神的、文化的生活にも関心を寄せている。調査によれば、一部の地方では農民就労者からなる同郷会、農民就労者協会、臨時就労者連合会などの自発的組織がつくられ、農民就労者向けの文学、芸術の教室も現れた。

農民就労者は都市と農村の発展にかかわる大きな層であり、調和のとれた、小康社会を構築するには、この層のことを改めて考慮に入れなければならない、と指摘する専門家もいる。

もし社会全体がは農民就労者の精神的、文化的生活をきわめて重視するようになれば、この問題はよりよく解決されることになろう。1億を超える人々の精神的、文化的生活が充実することになれば、それは結局のところ社会全体の進歩を意味することになる。

そのため、何よりも先ず農民就労者の生存環境を変えなければならない。国はできるだけ速く農民就労者向けの単項目の条例、地方的法規、業種基準、地域的労働基準をつくり、現有の文書を踏まえて「農民就労者権益保護法」を制定すべきであると専門家は考えている。

附 改革・開放以来の「3農問題」についての中央の7つの1号文書

@ 1982年1月1日の1号文書は、急速に広がりつつある農村の改革を要約したものである。戸ごと生産請負、戸ごと生産全面請負、包括的請負はいずれも「社会主義の生産責任制」であり、協同化以前の小さな私有経済と違い、社会主義農業経済の構成部分であると指摘している。

A 1983年1月の1号文書――「当面の農村経済政策に関するいくつかの問題」は、理論面から家庭単位生産量連動請負制が「中国農民の偉大な創意である」を解明したものである。

B 1984年1月1日、「1984年の農村の仕事に関する通達」が公布された。この1号文書では、生産量連動請負制を引き続き安定、充実させることが強調され、一般の土地請負期限を15年以上に、生産サイクルの長いプロジェクトと開発的プロジェクトの請負期限をさらに延長することが規定されている。

C 1985年1月の1号文書「農村経済のさらなる活性化に関する10の政策」は、30年におよぶ農業・副業生産物の統一買付・指定買付制度を撤廃し、食糧、綿花など少数の重要な産物に対し国の計画契約に従って買い付ける政策を実施することにした。

D 1986年1月1日に公布された「1986年における農村の仕事に関する配置」という1号文書は、農村における改革の方針・政策を肯定し、引き続き貫徹、施行するよう要請するものであった。

E 2004年1月、中央は農民の1人当たり収入が伸び悩んでいる状況を変えるため、「農民の収入増加促進についてのいくつかの政策に関する中国共産党中央委員会・国務院の意見」という6つ目6の1号文書を公布した。

F 2005年1月30日に公布された「農村における仕事をさらに強化し、農業の総合的生産能力を高めるいくつかの政策に関する中国共産党中央委員会・国務院の意見」は、「多く与え、少なく取り立て、活性化する」方針をあくまで貫徹し、さまざまな農業支援策を安定、充実させ、農業基盤施設の整備、農業科学・技術進歩の加速、農業の総合生産能力の向上を重要で差し迫った戦略的課題として、着実に取り組むよう要請したものである。