2005 No.14
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戦略的苦境に陥った朝鮮の核問題

米朝双方の一方か、または双方が同時に自らの戦略を調整しなければ、朝鮮の核問題を最終的に解決させることはできない。

時永明

(中国国際問題研究所)

朝鮮の核問題を巡る6者協議は、朝鮮が2月10日に協議への不参加と核兵器保有に関する声明を出したものの、中国が外交努力をしたことで再開の可能性が出てきた。だが、核問題を巡る米朝双方の戦略的なぶつかり合いは顕在化するだろう。これまで作業グループなど実務的会合で矛盾を回避しようとしてきたが結局、回避することはできかった。朝鮮の核問題を巡っては戦略的苦境に陥ったのは明らかであり、米朝双方の一方か、または双方が同時に自らの戦略を調整しなければ、問題を最終的に解決させることはできない。

平壌の選択肢

今回の声明には2つの特徴がある。第1点は朝鮮が第1期ブッシュ政権がすでに実行し、第2期政権下でも実施しようとする対朝鮮政策に対し、失望感を強調し、米国には朝鮮と平和共存する意思はなく、反対に政権改変の目的を達成しようと考えていることだ。第2点は、これを理由に、国際社会に核兵器の保有を公式かつ明確に通告したことだ。

朝鮮が6者協議から離脱した本意はどこにあるのかについては、国際社会の見方は様々である。真に6者協議から離脱しようとするなら、朝鮮はその他のより良い解決策を見出せないばかりか、むしろ国際社会でより長期にわたり孤立することになり、朝鮮の経済と社会の安定と発展にマイナスとなる。そのため、国際社会に朝米間のこうした戦略的食い違いを正視させ、米国の対朝鮮政策そのものが核問題に影響を与えるのは避ける必要がないと、いうのが真の意図ではないだろうか。   

だが、この声明は、朝鮮自らに明確かつ戦略的な選択の問題を提起するものともなっている。これまでと異なるのは、協議の角度から言えば、仮に朝鮮が言及した「核兵器保有」が単なる虚勢を張った協議に向けた策略だと考えるならば、今後の協議では「核兵器保有」という問題を回避するのは難しくなる。言い換えれば、朝鮮の声明をどう見るかにかかわらず、「確かにその事実がある」という角度から朝鮮半島非核化の問題を討議せざるを得なくなるだろう。では今後、朝鮮は果たして「核保有国」として交渉を行い、しかも「核兵器放棄」を道具に米国の対朝鮮政策の根本的な改変と引き換える戦略を講じるのか、それとも「核保有国」としての地位を確立するために、国際社会とわたり合う戦略を講じるのか、これは6者協議の発展方向に直接影響を及ぼすことになる。朝鮮が朝鮮半島非核化の目標を依然認めていることに目を向け、前者の戦略が選択される可能性が高いだろう。

現在、朝鮮は米政府の対朝鮮政策を主眼に、協議再開に向けた条件を提起している。これらの条件はある面から見れば、交渉の内容または目標のようなものでもあり、朝鮮は特別な方法で米国に要求を出しているかのようでもある。

ワシントンの策略

米国は朝鮮の条件を拒否し、無条件に6者協議に復帰するよう求めている。だが、米国も恐らく、次回の協議でどんな策略を講じるのかとの問題を考慮せざるを得ないだろう。米国としては朝鮮の協議再開の条件を拒否できるものの、朝鮮がこれらの条件を交渉での要求に変えるのは拒否しにくい。

実際、核拡散防止の面で、米国は今、総合的戦略と策略との間で頭を悩ませている。総合的戦略では、冷戦終結後の米国の核心的戦略は基本的に、覇者としての地位を確保し、自らのイデオロギーで世界を同化することだ。こうした戦略は現在、テロ取り締まりを中心とし、その徹底的な勝利を得るために外国に「民主制度」を輸出し、いわゆる「暴政国家」の政権を改変することなどに具体的に表れている。また、核兵器を含む大量破壊兵器の拡散防止もまた米国の国家戦略の重要な一部だ。だが、核拡散防止の問題では、米国は以前にも増して自らの覇権を擁護することに立って、敵対する国家が核技術を掌握し、テロリストが核原料物質を手に入れることを防止することが重要な関心事だ。そのため米国は、核拡散問題を解決するに当たり先ず、相手を敵対する位置に据えることで、この問題を相手に武装解除を求める問題にすり替えようとしているがために、自己の異なる目標との間で困惑することになり、問題はより複雑になっている。

こうした困惑は、朝鮮の核問題解決の過程で非常に顕著に表れている。米国は先ず朝鮮政権を「暴政」と決めつけ、米国の戦略上の敵対する位置に据えている。しかも米国の政策決定層の間では、朝鮮の現政権の改変を主張する声もよく耳にする。こうした中、朝鮮の核問題はすでに単なる核拡散の問題ではなくなっていた。ところが、米国側はもともと簡単な方法でこの問題を解決しようとしていたのだが、問題はかえってより複雑になってしまった。

朝鮮の核問題では、米国は効果的な解決策を見出せないままである。自身の戦略と戦術との間の矛盾が主因だ。米国は戦略的に朝鮮を敵対国と見なしているが、東北アジアの地政学的政治という現実が米国に、イラクで欲しいままに行ったように武力で問題を解決するのを不可能にしている面がある。また、交渉を通じてしか問題を解決できないとすれば、米朝間が政治的に対立する現実は回避しがたいとの面もある。こうした対立は、双方の基本的な社会制度とイデオロギー、それによってもたらされた歴史的積怨によるものであり、簡単に溶解されるものではない。朝鮮が米国との関係の正常化を求めると、米国内にはいわゆる朝鮮の「人権」や「民主」などを問題にする声が出てくるが、これもまた朝鮮に内政干渉だと見られることになる。こうした悪循環が付きまとうため、米国は核問題について朝鮮を相手にする場合、米朝間の政治面での基本的な矛盾を回避する策略を講じることがある。だが、こうした状況の下で、たとえ米国が策略的に朝鮮にいささかな確約をしたとしても、その確約は中身のない信頼性に欠けるものとなってしまう。6者協議の過程で米国は朝鮮を攻撃する計画のないことを再三表明しているが、同時に武力で解決する手段を放棄しないと繰り返し言明し、朝鮮の要求に応じて朝鮮に対し敵意のないことは表明しようとはしない。こうしたやり方では、朝鮮に米国には問題解決に向けた最低限度の誠意さえないと思わせることしかできないだろう。

朝鮮は2月の声明で米国に対し、核問題を解決する際、いかに米朝間の政治面での基本的な矛盾を処理するか、という問題を提起した。戦略的に言えば、米国は虚と実のどちらを選ぶかという問題に直面している。依然として主眼点を、朝鮮政権の改変によって徹底的な安定を実現することに置いていくとすれば、米国は朝鮮に対し強硬政策を継続しながら、幻想を現実に変えることを期待するしかない。もし実務的な態度に出るならば、いくつかの具体的な問題で柔軟性を示すべきであり、頑な立場から基本的な矛盾を回避してはならない。双方の敵対的な状態をいささかも変える気がないとすれば、今後も朝鮮の核問題解決の見通しが開けることはないだろう。

協議の見通し

朝鮮の離脱によって6者協議は一時停滞しているが、角度を変えて見れば、核問題が声明の発表で国際社会の前により明確に突き出されたことから、今後の協議で実質的な進展を遂げるための条件は整ったと言える。

これまでの交渉は、疑問が存在する状況のもとで行われてきたと言ってもいい。第1は、朝鮮が真に核兵器を開発したか否かが疑わしいため、朝鮮に釈明を求めようとすると、論争が生じていたことだ。例えば、米国が朝鮮にはウラン濃縮計画があると考えると、朝鮮はそれを否定していた。朝鮮がすでに厳粛な声明で国際社会に核兵器を製造したことを告知した以上、今後の交渉の場ではこの問題を考慮すべき基本点にしなければならない。こうすれば、これまでに論争の比較的多かった問題を、朝鮮に核兵器放棄を求めるという異議のない問題に簡素化することが可能となる。こうすることで、協議はより多くの精力を「いかに」朝鮮に核兵器放棄に同意させるかというより重要な問題に振り向けることができる。第2は、これまでの協議では、米朝間の政治的対立というセンシティブな問題が回避され、一部で実質的な措置を講じることで朝鮮に懸念を取り除かせ、そうすることで具体的な問題の解決を図ろうとしてきたことだ。だが、協議の場内外で米国の対立的な一部の言動はむしろ反作用を引き起こしている。今後の協議ではこの問題は回避しにくい恐れもあるが、少なくとも米朝双方は対立的感情の解消に向けて行動する必要がある。双方が冷静に問題に対処することができれば、矛盾の解決は多少なりとも容易になるだろう。

このところ米国には、イラン問題であれ朝鮮問題であれ、やや温和な姿勢が見られるようになってきた。果たして一時的戦術なのか、それとも政策的微調整なのか、今後も見極めていく必要がある。だが、いずれにしろ、温和な姿勢は協議の成功にプラスとなる。

現在は、朝鮮がいつ6者協議に復帰するかにより多くの関心が集まっているのではないだろうか。協議を成功させるより多くの可能性が見出されれば、再開はそれほど遠くはないだろう。