2005 No.14
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中国は消費大国か

――生産材の大量消耗は消費と同一ではなく、中国はやはり低消費の国であり、政府は現在、内需と消費拡大のため絶えず努力を払っている。

蘭辛珍

米国の地球政策研究所が先ごろ発表した報告書は、国内の一部の経済学者の間で関心を集めた。

報告書は「中国は石油と穀物、肉類、石炭、鉄鋼の消費でいずれも米国を超え、テレビや冷蔵庫、携帯電話分野でも遥かにリードしており、中国は既に米国を抜いて世界第一の消費大国となった」としている。

この結論に国内の経済学者は疑問を呈し、「中国が世界第一の消費大国であるか否かは、議論するに値する」との考えを示した。

「個別商品の大消費量は消費大国を意味しない」

北京経済貿易大学の黄偉民教授は「1つの国が消費大国であるかどうかに関しては、その国の1人平均消費が主要な根拠となる」と話す。黄教授の試算によると、中国の1人平均消費は米国に比べるとかなり低い。2004年は約4350元で、米国は1993年に3万692ドル(約3742元・1元=8.2ドルで計算)を突破した。

中国の人口は13億で、2004年の肉類の平均消費量は49キロ。一方、米国は同127キロ。

黄教授は「中国人2人の消費量は米国人1人にも及ばない。米国地球政策研究所の中国は消費大国だとする結論が、科学的がどうかは分からない」と話す。

更に黄教授は「中国の総消費量は米国を遥かに下回っており、およそ米国の10%に過ぎない。総消費量が低いとすれば、個別商品の消費量が多いからと言っても消費大国とはならない」と指摘。

中国社会科学院世界政治・経済研究所の姚枝仲博士も「米国と比べれば、中国全体の消費は米国以下であり、現在の中国は低消費国だ」と強調する。

「多くの商品は多消耗で少消費である」

また姚博士は「中国が世界第一の消費大国だと結論づけたのは、同研究所が消耗と消費の概念を混同したのが主因であり、現在、多くの商品では消耗は多いが、消費は少ない」と説明する。

姚博士によると、最終製品は使用されて初めて消費されたと言える。米国は年間8兆ドル以上の製品を消費しているが、中国は約8000億ドルに過ぎない。そのため姚博士は「中国の消費が米国を抜いた、と言うのはまさに“アラビアンナイト”だ」と指摘。

国家情報センター専門家委員会の高輝清委員は「中国の貿易依存度は大幅に上昇しており、2004年に65%前後に達した。これが1つの問題をもたらしている。その他の国について言えば、貿易の急成長は通常、国内生産による消耗または住民による消費も急速に増大していることを意味する。ただ中国では、貿易全体の半数以上を占める加工貿易は基本的に経済循環の中に組み込まれてはいない。加工型貿易企業は主に国際市場から鉱石や石油、基礎原料を購入しているが、こうした製品は国際統計では消耗品として扱われている。だが実際には中国で加工され、加工して作られた製品は基本的にやはり国際市場に回って販売され、外国で消費されている。例えば鉄鋼だが、中国は大量に輸入してはいるものの、それにより生産された最終製品の一部、例えばDVDは中国で消費されずに、米国で米国人によって消費されている。農業用トラクターは、ベトナムでベトナム人に。従って、こうした一部の消費は中国について言えば、一種の“見かけ消費”と言えるだろう。暫定的な推算だが、見かけ消費は年間2000億元超に上る」と説明する。

新聞「中国経営報」はこう報道している。「中国が米国を抜いて最大の消費国となった、とする結論は不正確な概念による不正確な判断だと言える。中国経済の消費量に対する過剰な誇張は、マイナスとなる問題を引き起こすことになり、世界は中国経済の発展に慌てふためくことになるだろう」と。

「中国の消費比率は依然として低い」

消費は経済成長を牽引する手段の1つである。だが、米国地球政策研究所が発表したこの報告書に対し、政府高官や経済学者、さらに庶民の間にも、消費が経済を顕著に牽引したという実感はなく、逆に、いかに消費を喚起させるかについて、経済政策決定者の頭を悩ませることになった。

90年代以降を見ると、総消費額がGDPに占める比率は世界平均が78〜79%、米国や英国など先進国では80%以上に達しているが、中国では1996〜2004年の比率は約50%と、世界平均を大きく下回る。

中国では消費の占める比率は低い。しかも都市と農村、東部と西部とを比較すると、非常にアンバランスだ。都市と農村の人口比は4:6。だが、消費総額の65%は40%の都市部住民が創出している。西部地区を見ると、消費総額は全国の僅か16.2%、1人平均では同43%余り。

商務部が主要600品目を対象に2004年下半期の供給状況について分析を行ったところ、

需給バランスがほぼ取れている品目は全体の25.7%、供給過剰は同74.3%に達した。

中国社会科学院工業研究所の陳耀研究員は「中国の経済成長は主に投資が牽引しており、消費がGDPに果たす貢献度は先進国を遥かに下回る。住民の収入格差、また都市部と農村部、地域間との収入格差は大きく、しかも拡大し続けているため、消費そのものが伸び悩んでいる」と指摘する。

「別の視点に立てば、経済発展を映したもの」

陳耀研究員は「中国は実際、消費大国ではないが、この報告書は別の視点に立てば、中国経済の発展を映したものだ」と指摘する。

レスター・ブラウン地球政策研究所々長は報告書を発表した際、「これは中国が世界の経済強国に向けた重量な里程標となるものであり、中国は今まさに、その経済史を書き記そうとしている」と強調した。

陳耀研究員は、この報告書は全世界の投資家に対し、具体的に言えば(1)経済の急成長に伴い、13億という巨大な潜在的な市場が顕在化しつつある(2)投資の機会はより増大し、分野もより拡大する――との情報を提供したものだと分析している。

1人平均GDPが800ドルに達した国では、内需が急速に拡大する。中国のGDPは既に1000ドルに達しており、内需拡大の基盤は既に整った。まして中国は世界で人口最多の発展途上国であり、巨大な人口とそれが抱える巨大な潜在的購買力は、消費の拡大に大きな将来性のあることを示している。