2005 No.16
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財テク市場を巡る内外銀行間の争奪

李子

Aさんは出版社の編集者、奥さんはテレビ局広告部の職員。二人の月収はそれぞれ5000元(1元約13円)に8000元。Aさんには年末に3万元余りのボーナスが、奥さんも広告の歩合給が支給される。1999年に仕事や生活、旅行に便利にと17万元で乗用車を購入した。預金もあり、子供はいない。預金の価値を高め、より快適な生活をすると共に老後の生活を確保するために、いかに財テクを図るかが悩み種だと言う。

1997年、Aさんは何の証券知識もなしに10万元で2銘柄の株を購入したが、株価は値下がりし、現在の価値は2〜3万元。その後、新株や証券市場でその他の商品を買おうとはしなかった。だが銀行の金利は実質マイナスの時代。そのため預金には興味はなく、また投資を考えるようになった。だが、何に投資したらいいのか。

現在は良くなった、とAさん。「いかに投資するか、何に投資するかで悩む必要はなくなった」と言う。預金しさえすれば、銀行の資産運用担当者が相談に乗ってくれるため、心配することなく、安定した利益が得られるようになったからだ。

各種の資産運用商品が次々に市場に出てきたのは、2003年以降。国債から外貨への運用、人民元から金への運用と、資産運用業務は急速に発展してきた。とくに世界貿易機関(WTO)に加盟し、外国銀行への開放が進むに伴い、内外の銀行は相次いで資産運用サービスを開始、競争は白熱化しつつある。

いかに自分の収入を合理的に配分するか、いかに手元に遊ばせている資金を有効活用するか。一般庶民の資産運用への関心はますます高まっている。中国が財テク時代に入るのは間違いない。GDPが20年連続して成長を維持してきたことから、「財テク階層」が誕生した。

ビジネスチャンスが到来

中国中央人民銀行の統計によると、2004年12月現在、国内金融機関の個人預金総額は11兆9555億3900万元で、うち定期性預金は7兆8138億8600万元。各銀行の資産運用部が狙いを定めているのが、約7兆8000億元の定期性預金だ。2004年9月から12月までの僅か3カ月間で、財テク市場は300億元の規模にまで急成長した。業界関係者は、今年は1000億元に達すると予想している。

マッケンジー社の調査によると、年収4300ドル以上の中・高収入家庭は約3000万世帯を数え、うち4%の120万世帯が10万ドル以上の預金を持っている。こうした富裕層だけで個人預金の50%以上を占める。銀行にとって、資産運用の発展に向けた潜在力は非常に大きい。

同社の予想によると、2002年の財テク市場の利益は310億元に達し、利益増加率は16.5%で、2006年には570億元まで増えるという。内外の金融機関にとっては、まさに巨大で魅力ある市場。資産運用管理業務は世界で急速に発展しているが、中国ではまだ立ち上がったばかりだ。

中国工商銀行の張富栄副行長は「今後10年の間、財テク市場は年30%のテンポで急成長していくだろう」と予測する。ある専門機関が北京と天津、上海、広州の4大都市を対象に行った調査では、74%の人が資産運用サービスに関心を示し、サービスが必要だと答えたのは41%。推算によると、金融資産の80%は人口の20%で占められ、100万元超の資産を持つ家庭は1000万世帯を超えており、2億6000万人の中間層が生まれつつある。

大通証券研究発展センターの張炎・金融高級研究員は「資産運用市場で先行した者が、将来の金融競争で優位に立つのは明らかだ。そのためこの数年来、各銀行が売り出す独自の財テク商品が顧客を引き付け、業務を発展させるための有力な武器となっている」と説明する。

もちろん、別の理由もある。新たに金利が引き上げられた当初、物価は上昇を続け、住民が預金で得られる利益が、インフレなどの要因で巨大な損失を被っていることだ。これについて張炎研究員は「2003年に消費者物価指数(CPI)が3%を超えて以来、物価指数が名目預金金利を上回るマイナス金利時代に入り始めた。今年のCPIは4%から5%前後を徘徊しており、引き上げられた2.25%の金利と比べても、実質金利はマイナス2.7%前後に留まっている。庶民は様々な財テク手段を講じて手元預金の価値を保ち、高めようとしている」と分析する。

銀行同士のせめぎ合い

光大銀行は2004年11月8日、30の支店と373の営業所で資産運用月間キャンペーンを開始。民生銀行上海支店も同月17日から、新たな財テク商品を売り出した。当日は開店1時間で売上高は1500万元、翌18日は1億5000万元に達したという。顧客を引き付けた最大のセールスポイントは、同期間の貯蓄商品より利益率が高いことだ。

次いで招商銀行や広東発展銀行も独自の財テク商品を販売。2005年1月には中国建設銀行や中国工商銀行、中国銀行など国有銀行も活況を呈する財テク市場に参入した。中国建設銀行と中国工商銀行の財テク商品は同日販売となったが、それぞれ当初目標の20億元、30億元相当の商品は当日に完売した。

一方、外国銀行は2006年の個人金融サービス分野への全面的開放が近づくのを前に、その準備を水面下で進めているところだ。

オランダ銀行中国地区担当役員は「われわれ銀行グループは今後、1、2年以内に大陸の7都市に支店を4点増設するほか、高所得者の資産運用業務を拡大するため20カ所に財テクセンターを設立する計画だ。この分野の中国市場は巨大な潜在力、ビジネスチャンスがある」と話す。

その他の外銀大手も業務の強化に着手している。チャータード銀行は数年内に、個人サービスを展開する支店を3行から20行に増設。香港上海銀行は成都と重慶の2カ所に駐在員事務所を支店に昇格させた。主要都市での支店数は12行まで増える。

2005年の内外銀行による個人金融業務関する推移を見ると、先ず、国内4大銀行と株式制銀行との間では財テク商品を巡る競争、外国銀行は本来のサービス面での優位性を発揮し、国内銀行との間で高額所得の顧客を巡る競争が激しくなるだろう。

高所得顧客の獲得争い

シティバンク北京支店の高所得顧客担当マネージャーは最近、国有商業銀行に5万ドルの資産を持つ大口顧客を引き抜いた。「顧客は以前の銀行から預金を引き出し、シティバンクに口座を開設し預金してくれた。顧客に全面的なサービスを提供していく」。顧客は「銀行の顧客として初めて、“神”のような存在感を味わった」と話す。

同じ様な顧客の大規模な銀行シフトは北京や上海、広州といった大都市でも起きている。大口預金者による国内銀行離れは、外銀の利益率の高い魅力ある商品が原因だ。

シティバンクでは、5万ドル以上の資産を持つ人が高所得の顧客。同行の資金運用センターは、顧客に全ての情報を口頭で伝えている。いつでも外貨相談に応じ、電話で通知するなど、外貨交換で顧客の手元資金の価値を高めるサービスだ。

外国銀行は相次いで豊かな都市に進出し、高所得層をターゲットにした業務を始めている。北京市の場合、推定で高所得層は30万人超。

商業銀行の資産運用業務では、20%の顧客が銀行に80%の収入をもたらしているという。高所得の顧客を取り入れれば、最大のシェアを獲得できるのは間違いない。実際、外国銀行は中国で業務を展開して以来、どの銀行も「高所得顧客」の旗印を掲げてきた。シティバンクや香港上海銀行、チャータード銀行、東亜銀行などは既に中国人に耳慣れた「富裕銀行」であり、高所得層を対象にした資金運用サービスを前面に打ち出している。

東亜銀行とチャータード銀行が先ごろ公表した2004年次報告によると、両行は中国国内で好業績を上げた。東亜銀行の協調融資は50%の伸びを見せ、純利益は43%に。香港に本部を設置したチャータード銀行は、M&A(企業の合併・買収)で多大な収益を上げている。

中国銀行業監督委員会が公表した統計によると、2004年10月末現在、19カ国・地域の62行が204カ所に営業拠点を設置しており、うち人民元取扱業務を認可されたのは105行に上る。外国銀行の在中資産総額は659億ドルで、国内銀行の1.8%を占める。2004年1〜10月の利益は累計2億1000万ドル。

外国銀行は中国で長年にわたる努力を積み重ねて既に一定の業績を上げているが、更なる収益の拡大を期待しているのは明らかだ。

外国銀行間の高所得顧客の獲得争いを前に、国内銀行も次々とこの分野に進出している。招商銀行は2004年11月18日に、光大銀行も同年12月15日に個人資産を運用・管理する新商品を発売した。

4大国有銀行も例外ではない。中国工商銀行北京分行は2004年12月20日、資金運用センターを開設。中国建設銀行は2005年1月31日、最高所得層専門に金融に関する投資、情報相談など30種以上に及ぶサービスを提供するセンターを開設した。

だが、中国工商銀行北京分行の王金也副行長は「高所得の顧客を対象にした業務では、国内銀行は外銀に比べ劣勢にある。こした顧客の争奪が外銀の中国での主要な競争戦略の1つだ」と指摘。

その上で王副行長は「WTO加盟後、その他の業界と同様、世界の銀行大手が中国に進出してくるだろう。これは回避できない現実であり、市場競争の必然のすう勢だ。外銀による富裕層の争奪戦を受け、国内銀行は刷新しなければ生き残れなくなる」と強調する。

業界関係者は「外国銀行の高所得層中心の営業によって商業銀行の顧客層の細分化が一段と進み、また市場の枠組みも変化していくだろう。細分化に伴い、各銀行は高所得顧客の争奪を最優先し、2005年にはより多くの銀行がこの分野に進出し競争を展開していく安徽省‘」と指摘している。